第2回『ひかりのかけら』プロジェクト金巻兼一原作・『ひかりのかけら』総評

★第1回『ひかりのかけら』総評【金巻兼一(原作者・スーパーバイザー)】「私にとって最終審査は幸せな時間でした。私が書いた時点では一つの色しか持っていなかった原作ストーリーが、何色にも変化して目の前に現れたのですから。想定できた色もありましたが、予想もできない色で染めてくれた人もいました。約40頁の漫画を描き上げるというのは、大変な労力を要します。しかもストーリーは指定されているので、苦手なシチュエーションであっても楽な画表現へ変更することはできません。でもプロとしてやっていくのであれば、どんな画表現でも描けなくてはいけません。頑張りの痕跡、その結果うまく描けなかったコマなどもありましたが、その立ち向かった努力を嬉しく思いました。技術は学べば身につきます。ですから、今は至っていなくても問題はないのです。ひのもとめぐるさん、たきもとざざさん、小鳩まりさん、おめでとうございます。今回我々が求めたのは“魅力的な個性”という感性です。皆さんの作品にはそれが溢れていました。そして、皆さんはここからが本当のスタートになります。サンプラントのバックアップのもと、“自分の得意”をさらに磨き、大きく羽ばたいてください。残念ながら選ばれなかった方々も、今回最終審査に残ったこと、応募作品をしっかりと描きあげたことを誇りに思ってください。選ばれこそしなかったものの、どの作品にも魅力がありました。磨けば光るであろう個性の原石と呼べる画表現も多々ありました。どうか今後も是非、踏み出した勇気を忘れず、自分の可能性を追ってください。一次審査の基準はエネルギー量だったと書きました。では最終審査の基準は何だったのか。それは“温度”です。演出センスも基準の一つでしたが、今回は与えられた原作があったため、ストーリーを追うこと、再現することに気がいってしまう傾向があり、結果として審査上そのポイントはあまり重要視しないようにしました。そこで大きな判断基準にしたのが、“温度”です。漫画の最大の魅力はキャラクターです。私の設定したキャラクターに感情移入をして、どれだけ生き生きと描けているか。同じ台詞でも、キャラに血が通っていれば自ずと温度を生み、読者の心へ届きます。漫画化する段階で私のストーリープロットの台詞を変えたとしても、描き手(漫画家)とキャラクターがしっかりと同化できていれば作品観を損なうことはありませんし、私自身も台詞が変わったことに違和感を感じたりはしません。一方、きちんとキャラと同化できていない状態で台詞を自分好みの言葉に変えてしまうと、作品観は崩れてしまうことになるのです。選ばれた3名の作品ではキャラクターがとても魅力的に動いていました。並べると描き手ごとにまるで別々のキャラクターを動かしているように見えても、実はどれもがちゃんと“あいり”であり、“燐”でした。こじんまりと小綺麗にまとまるよりも、「このキャラはこういうふうにしたらかわいい」「このシチュエーションはこう描くと面白い」という想いが大切なのです。そしてその描き手の想いから生まれた無意識の嗜好が、“自分の得意”の一部です。それを意識して磨いていくことができれば、誰も真似の出来ない唯一無二の漫画家になれます。選ばれた3名の進化、楽しみにしています。また今回惜しくも選ばれなかった皆さんも、今回描きあげた自分の作品を是非改めて客観的に読み直してみてください。「ここ、好きだなぁ」と感じる部分を見つけたら、それをどういう気持ちで書いたのかを自己解析して、今後の漫画に生かしてください。今回このプロジェクトで、素敵な漫画、そして個性的なセンスを持った漫画家さんたちに出会えたことをとても嬉しく思っています。参加してくださったことに心から感謝します。ありがとう!」